山片蟠桃
「金銀銭貨ノコト、上古漢土ニハ亀貝(キバイ)ヲ以テ幣(ヘイ)トス。ソノ内ニ貝ヲ貴ブ。ユヘニ宝貨(ホウクハ)・財賄(ザイわイ)・売買(バイバイ)・貪貧(ドンヒン)ソノ余、金銭ニカヽルノ字ハミナ貝ニ従フ。コレ古昔(こせき)字ヲ製スルノ時分ハ、…
「アゝ金銀ハ食スベカラズ。多キニ賎(いや)シク、少キニ貴(たつ)トキハ、理ノ当然ナリ。金銀山ノゴトクニ積ムトイヘドモ、米ナキトキハイカヾセン。」 (『夢の代』) 世界的に食料価格が高騰しているようだ。金銀の価も需給で決まるにすぎないが、いか…
「・・・西国ヨリ出(いず)ル産物ノ利、半(ナカバ)ハ都会ニテ削ラル。都会ニハ金銭アマリテ西国ハ足ラズ。シカレバ都会市井ノ民ヲ虐ゲテ、農民ヲ引立(ひきたて)テ耕作ヲスヽムル政事ヲスルヲ、第一ノ枢要トス。・・・ (『夢の代』経済第六) 地方から…
「・・・近世昇平(しようへい)ノ弊(ツイヘ)、驕奢ニシテ生業ヲトゲ得ズ。・・・ (『夢の代』経済第六) たしかに平和の時はその弊害として人は奢りぜいたくとなり、生業がおろそかになる事例を見るか。
「・・・捨(すて)ヲク時ハ一日一日ト流レテアシクナルハ勢ナリ。コレヲ長ゼシメザルヤウニ引戻スニアルベシ。コノ処ニ心付(こころづか)ズシテソノ日ヲオクリニ政ヲスル人、路ニ当(あた)ルトキハ、イカントモスベカラズ、歎ズベキ哉(かな)。 (『夢の…
「・・・今世(きんせい)ハ米穀多キ国アリ。布帛(ふはく)ヲ織出ス国アリ。紙ヲスキ木ヲ伐リ、スベテ諸産物一種二種ヲ多ク持テ、他ノ諸物ハ国ニテ作ラズ、必(かならず)都会(トクハイ)ヘ出シテ、ツマル処ハ諸物ト交易シテ国用ヲ達スル也。ソレニテモ足…
履軒(りけん)先生曰、「十万石ノ国ニハ農三万家アルベシ。ソノ人数ハ十万人アルベシ。国君ヨリ大夫(たいふ)・士ソノ余工商ニ至ルマデ、浮食(ふしょく)スル人二万人アルベシ。十万人ノ民、五万ハ耕スベシ。五万ハ織(おる)ベシ。十万人ノ税ヲ以テ二万…
宝尊ぶべき宝とはなにか。山片蟠桃、『夢ノ代』を久しぶりに手に取る。 「古(いにし)ヘヨリ天下ニ米穀ヨリ宝トスルハナシ。然ルニ諸物ノアタヒ貴(たか)ク米価賤ケレバ、民ソノ宝タルヲシラズ、ウカウカト食シ、膾炙(かいしゃ:なますやあぶり肉をいう)…
ネットを始め、情報は爆発的に多い。しかし、 人アリテ後(のち)事アリ、事アリテノチ字アル(山片蟠桃) 人が事を起こす、事アリだ。事があって、これを伝える字(情報)がある。 この順番、肝要。膨大な情報のなか茫然自失する必要なしか。
蟠桃、『夢の代、制度第五』から。 天下ハ天下ノ天下也。アニ一人ニ私センヤ。興ルモノヲヲコシ衰フルモノヲ廃ス。自然ノ勢ナリ。ミダリニ平家ビイキ、判官ビイキヲスルハ、婦人ノ仁ニシテ、大仁ニアラズ。 天下はみなが共有するもの、私にできるものではな…
この言葉、孝経広要道章にあるようだ。蟠桃の『夢の代、制度第五』にこうある。 「風(ふう)ヲ移シ、俗(ぞく)ヲ易(カウ)ルハ、楽(がく)ヨリヨキハナシ」。 アヽ旨(ウマ)ヒカナコノ言ヤ。 世の中の風俗、人々の性向、これらを変え習俗を変えていくの…
山片蟠桃の『夢の代』は好きな書物のひとつ。とにかくその自叙からして好み。 自叙 夏の日の長きに倦(う)みて、枕を友とし眠らんとせしが、忽(たちまち)思ふに、「我既(すで)に齢(よわい)五十にすぎて、徒(いたずら)に稲をくらひ布帛(ふはく)を…