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よろづ天道まかせで

萎微

『海舟座談』の下記のくだりを読むと、あまりに事情に詳しく、時局の動きに通じているのも考えものなのかもしれないと思う。

「昨日は千駄ヶ谷へ行つて、道はわるし、ヒックリかへらふとするし、夫で考へてゐて、おかしくなつて豁然(かつぜん)大悟したよ。徳川の末の官吏が、少しも時勢を知らなかつたのは、大キによかつた。あれが知らふものなら、夫は夫は萎微していけないよ。今の役人を御覧な。あちら、こちらと少し宛の時勢にスラ動いて、そのつど萎微して何も手に着きやしない。あれは、何も時勢を知らない方が便利だと、悟つて、笑つたが、どうだ、先人未発の議論だろう。・・・」
勝海舟、『海舟座談』、岩波文庫、p.115.)

萎微(いび)は萎靡ということだろうが、しおれて元気をなくす意味と思う。時勢をよく知っていると、少しの変化にも影響され、対応して動くほどに意欲を失い、なにも手につかなくなる萎縮した状態に陥るから、知らないほうがまだましという冗談を語っているのかな。昨今のお役人を見たらなんというか、考えてみるのもおもしろい。