いまもって、やれなんとかと、外国で仕上がったものをもってきて、それをスタンダードとする。そして、さも権威のふるまいというのを見ますね。状況が変わればまた違うものを探してもってくるにちがいない。しかし、よそで出来上がったものは他所様に合ったものでしかないだろう。こちらはいつだって、こちらに合ったものを作る最中にある。
で、・・・
引用ひとつ
「縦令(たとい)西洋の標準がよい、それがよろしいとしても、吾人はこれを経験に訴へねばならぬ。また経験して貰はねばならぬ。さてこの上で吾人の得た標準から判断するのを正当とするのである。」
(夏目漱石、『戦後文界の趨勢』、明治38年8月。)