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よろづ天道まかせで

切れ物

ものまえという言い方がある(あったといったほうがよいか)。漢字では、物前とか武前と書くようだ。なにかの大事の始まる前で、武前とかけばいかにも戦(いくさ)の始まる直前の感じがする。ふつうは正月やお盆、なにかの行事などの物日(商家の決済日でもあった)の前、昔は掛け売りが一般的だったが、その支払いや決算の前を言った。

こういう時は、ふだんよりもとりわけカネがものをいった。資金需要が高まっているから。

西鶴は『好色盛衰記』巻三で、こう言っている。

「物前の銀(かね)は、京も田舎も切れ物ぞかし」

いざというときの解決者としてカネはいつの時代も切れ物である。