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よろづ天道まかせで

社交の情操

3月11日である。あらためて、陸前高田、奇跡の一本松の写真を見る。
陸前高田 一本松

この松の木がいかに人に勇気を与えてきたか、そんな思いのなか、かつて西周が、国民性(ナショナリティ)と郷土愛(パトリオチック)につき、大なる社交の情操として述べた一文を想う。

「・・・社交の情方今ニ在テ・・・、其大イナル者ヲ国情(ナシヨナリチー)ト云ヒ国愛(パトリオチク)ト云フ、二ッノ者共ニ吾人社交ノ情操ヲ指ス者ニシテ・・・今吾人異境ニ在ル多年一日旧里ニ帰リ少時曾テ盤桓撫愛スル所ノ一松樹ヲ見ル怡然トシテ相懐フアルカ如シ、是豈無情木石ノ為メナラムヤ、盖シ社交ノ情人心ニ固結スル者乃チ然リ、況ヤ朋友故旧ヲヤ況ヤ親戚ヲヤ、故ニ社交ノ道ハ人生ノ急務須臾モ離ル可ラサル者ナリ、・・・」(西周、『人生三寶説』、全集第一巻、p.525.)

名文である。多言を要しない。一松樹、大災厄のなか、「社交ノ情人心ニ固結」せしめている。日本とそのそれぞれの郷土にはぐくまれた者たちの連帯の気持ちの象徴であり、我らが社交の情操として、そこにある。