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よろづ天道まかせで

見物

震災からの復興のこともあり、今年ほど、地方自治について考えさせられたことはない。石橋湛山は大正14年に「市町村に地租営業税を移譲すべし」でこう書いていた。

「・・・地方自治体にとって肝要なる点は、その一体を成す地域の比較的小なるにある。地域小にして、住民がその政治の善悪に利害を感ずること緊密に、従ってまたそこに住まっている者ならば、誰でも直ちにその政治の可否を判断することが出来、同時にこれに関与し得る機会が多いから、地方自治体の政治は、真に住民自身が、自身のために、自身で行う政治たるを得る。・・・政治は一面にそれ自身が仕事であると共に、またその大なる意義は、国民の公共心と聡明とを増進する実際教育の役目をなす点にある。しかるに国の中央政治の如き、大なる地域にわたる政治においては、多数の国民が親しく政治に関与する機会はすこぶる乏しく、数年に一回来る選挙の場合のほかは、ただ新聞を通じて、遠くからこれを見物するに過ぎざる・・・有様である。のみならずまた仕事も、多数の国民には直接の利害なく、理解し難き事項が多い。されば政治が、かようの広き地域のもののみに限らるるときは、一般国民のこれに対する興味は、角力(すもう)見物か、芝居見物以上に出でず、これを以てその公共心と聡明とを増進する教育の役目をつとめしむるが如きは望み得ない。従ってまたこれだけに頼っていたのでは、中央政治そのものも、いつまでたっても進歩しない。・・・」

震災からの復興には地方政治も中央政治も多大の努力を必要としたし、これからもそうだ。しかしとりわけ中央政治に対しては、見物しかできず、気持ちを鬱屈させてきた国民も多かったろう。結局、その鬱屈を晴らすには自らできることをボランティアでなすほかない。しかし、政治のもたつきに気持ちが晴れ渡るということはない。政治を変える、しかしその手がかりは地方政治。そうした動きが力や支持を得てきているのはわかるような気がする一年であったかな。