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よろづ天道まかせで

みかへりたる時

「又其昔(そのむかし)足利尊氏京軍に戦(たヽかひ)まけ 西国(さいこく)へ落下(おちくだ)りしに 続て追かけ追かけ討なは 亡ふへかりしを 義貞(よしさだ)軍(いくさ)におこたりて追捨(おひすて)て遠く追はす 楠(くすのき)これを諫(いさめ)て 今(いま)追(お)はすんば歒はみかへりなんと再三いさむれとも聞す 果して西国の勢を集め都に上りしかは 義貞叶(かな)はす討負(うちまけ)られしも商の能(よき)手本(てほん)成へし 喩(たとへ)ハ米段々下るとき追かけ追かけ売のせる 是歒を追ふに等し 此図をはつすへからす 安直仕舞になりたる所にて過分の利分と成へし 或は万一追かけ追かけ売たる米ゆへ有てかいて出来り段々高き方に向へは是はみかへりて結句(けつく)始(はじめ)より高く成事あり 此はみかへりたる時に必向ひ商すへからさる成り 是等の事一を以て万事に準し考へし 尤上りの時も理ハひとつなり右の高下一日の内に有事あり又ハ五日十日一月二月の間を兼て有事あり深く味ふべし


まことに価の高下、下がるときは下がり続け上がる時は上がり続けるかに思えるときがあるが、さにあらず。追い捨てて手を引くのも考え物か。しかし下がるときに売り乗せていく辛抱は並みの精神ではできんな。また「みかへりたる時」は必ずあるが、そのときを知り、向かい商いをせぬこと、まこと深く味わうしかないか。