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よろづ天道まかせで

交遊

 ・・・都市は格別に人が互ひに知り難く、同時に又虚構粉飾の行はれ易い新住地であつた。さうして是に住む者の気質も一人々々に変われるだけ変らうとして居る。それが心を軽くし洞察を鈍くし、更に又酒といふ感覚を切ならしむる力ある飲料を以て、交遊の唯一つの手段とする事になつたのである。


#柳田國男
『明治大正史』、「恋愛技術の消長」より

 

都会にはいろんな変わった人がいる。それでも、深い付き合いをするでもなく、へえーと驚いても気持ちに重たく響くこともなし、深く詮索し考えてみるでもない。まあ気楽だ。

酒につき、ここで、「感覚を切ならしむる」というのは感覚を頼りにするぐらいの意味だろうが、酒を止めてみて、そういえば、交遊は酒席ばかりで、それを敬遠してみると、ろくに交遊の機会もなくなったことを知る。人の感覚にナマで触れられるような機会が酒を介さずになにがあるのかふと思った。