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よろづ天道まかせで

「国に遍満する常人」

quote of today 2019-02-21
#柳田國男

『明治大正史、世相篇』の自序で柳田國男は、その最後で、この書についてこんなことを付け加えている。

此書が在来の伝記式歴史に不満である結果、故意に固有名詞を一つでも掲げまいとした・・・。従つて世相篇は英雄の心事を説いた書では無いのである。国に遍満する常人といふ人々が、眼を開き耳を傾ければ視聴し得るものゝ限り、さうして只少しく心を潜めるならば、必ず思ひ至るであらう所の意見だけを述べたのである。之を以て一個特殊の地位に在る観察家の論断を、人に強ひるものと見られるのは迷惑である。

けっきょくいつの間にか歳をかさねてしまい、場末にひっそり暮らす年寄りが、なにげなく読んでみようと手に取った本でこういう言葉にであうのはうれしい。じぶんも「国に遍満する常人」のひとりにいれてもらえるとすれば、そして最近はとくに心を潜めて生活の近辺から世の中をみているのだから。