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よろづ天道まかせで

腹のなかに針

自由民権運動の歴史を調べると、大阪事件に関与して投獄された憂世愛国の女志士に福田英子がいることを知る。事件当時、19歳。獄中で有名な「獄中述懐」を書いている。本人の後に回顧するには「狂者の言に近い」そうだが、名文である。

原典がないので、和田芳恵による現代語訳から引用してみる。

「私がつくづく考えると、今は外交が日に開け、さも親しいような状態であるけれども、腹の中には、それぞれ針をたくわえ、優勝劣敗、弱肉強食、日々に猛禽が欲をたくましくし、しきりに東洋を蚕食するきざしが見える。そしてわが国外交の状態について、近く私の感じるところをあげると、さきに朝鮮変乱から日清の関係になり、その談判ははたして私たち人民を満足させる結果を得たであろうか。そればかりでなく、この時にあたり、外国が注目していることは火を見るよりあきらかである。ところがその結果が不十分で、外国人もひそかに日本政府の微弱無気力なのを嘆いたとかいうことだ。ああ、日本に義士がいないのか。ああ、この国辱をそそごうと願う烈士、三千七百万人のなかにひとりもないのか。・・・たとい女子であっても、日本人民である。この国辱をどうしてもそそがなくてはならないと、ひとり憂えて・・・」

国際関係というのはいつの時代も変わらない。明治初期と同じ状況と思えば間違いはないのかな。腹のなかに針か。