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よろづ天道まかせで

天地へ恩を報ずる

 処生は粟飯炊ぐうちに五十年の夢を見、我は煮花の出来るうちに千万人の辛苦を知れリ。われ浮世を夢と思ひなして、只うかうかと暮らしたるが、今日より心を改め天地へ恩を報ずるため一つの渡世を始めん。
京伝、『栄花夢後日談金々先生造化夢』

粟飯炊くうちに50年の栄華と没落の夢をみたのは恋川春町の戯作、「金々先生栄華夢」での話。


これは京伝の作品で寛政6年刊の全三冊、一椀の茶漬けに人々の千辛万苦を述べた本といわれる。煮えばなとは煮物、汁物が煮立ち始めるとき。そんないちばん芳しい一瞬に、多くの辛苦を知り、うかうかと暮らす渡世から、一大決心、天地の恩に報いるために新生活を始める教訓話だそうだ。

浮世は夢のごとしなぞと言ってウカウカ暮らしててよいのか、ということだ。京伝らしい作品というべきか。